コンビニのお菓子コーナーで考えること - Amazon、Netflix、D2C

セブン-イレブンにせよ、ローソンにせよ、ファミリーマートにせよ。

お菓子コーナーを眺めると、自社ブランドのお菓子が並んでいることに気が付く。いつからだろう? 数年前には、もっと、色んな会社のお菓子が並んでいた筈だ。お菓子だけでなくドリンクも、自社ブランドが結構増えている。アイスとかも?

自社ブランドのいいところは、第一に安い。他社の類似の物よりも十円、二十円安い。第二に、好みのお菓子やドリンクが揃っている。嬉しい。たまに、オリジナルの方がおいしかったりもするけど(サッポロポテト!)、まあ、大体、満足いく味だ。

オリジナル? そう、セブンのあれは、明確に、サッポロポテト バーベキュー味だ、名前からは伺えないが。味がちょっと違うので、(サッポロポテトを作っている)カルビーが作ってセブン-イレブンのブランドを冠した商品ではなく、セブンが独自に(或いはカルビー以外の所と組んで)作っている商品だろう。

こうしたことは、コンテンツの世界ではずっと問題にされてきた。Netflixが、映画、テレビドラマ、アニメなどの映像作品を作っている各社と契約を交わして、それを配信する。僕等がNetflixへ払ったお金は(間接的に)制作側へと入る。

しかし数年前から、Netflixは制作費を自社で出し、ドラマを撮るようになっている。独占配信だ。監督などの制作チームには、より直接的にお金が入るようになった(のだと思う。知らんけど。)。一方でNetflixは、視聴者との接点も持っている。どんな分野の作品が、どんな長さの作品が、どんな構成の作品が視聴者に好まれるのか、そういったことを知り得る立場にいて、これは制作側やテレビ局などには不可能だ。(部外者なので推測で書いています。)

こうした立場を利用して、彼等は売れることがほぼ分かっている原作を探し出して映像化し、契約により配信権を獲得したほかの作品よりもよりよい位置に置くことで実際に売ることができる。(法律に触れるリスクも出て来るけど。)これは健全なことなんだろうか? Netflixの名前を出しているけど、HuluだってAmazonプライム・ビデオだって、事情は一緒だろう。

ところで、僕は現在株式会社コルクに勤めていて、だからこの話題は結構危ない。出版の世界の話はしないでおく。気になる人は想像してみてください。

コンビニの話に戻ると、同じことがお菓子についても行われていたのではないか、と最近ようやく思い至った。全国チェーンのコンビニは、売れ筋商品を占う膨大なデータを持っているわけなのだ。そして、自社ブランド商品を少しだけ安価にすることで競争力を持たせられる。何なら、今は、類似商品を置いてさえいないように思う。自社ブランドのお菓子に好みの商品が入っているのは、当たり前だったのだ、だってそういうのを自社ブランドから出しているのだから。

お菓子の製造だけを担い、販売はコンビニやスーパーなどの小売りに任せている会社は、中々苦しい思いをしているのではないか。自分たちが苦心して探り当てた人気商品をあっさりとコピーされてしまう。

このことに気付いたのは、木村石鹸の社長である木村祥一郎さんのブログ記事「顧客接点を持つ流通がPBでどこかで見た商品を出す問題について」を読んだからだった。小売りとしてのAmazonが、人気商品の類似品を作って出していることについての話だ。

これらをでも、僕は否定し切ることができない。だって消費者にとってはいいことばかりだ。安い。好みにフィットした商品・作品が作られる。それが加速する。自由主義経済の中で、細かな消費者行動データを多量に取得できるとなれば、当然起こることだ。それが行き過ぎないようにする法律は存在しているのだから、今現在行われている程度は合法で、大まかに合意された倫理の範囲内だ、という形になる。

でも、この流れにあまり載っていないように見える物もある。コンビニで言うとデイリーヤマザキ。山崎製パングループの運営で、基本的には既存の物を仕入れて売っているけど、パンは店内で焼いたり、山崎製パンの物を仕入れたりして、強みとしている。寧ろパンを売りたくて店を出し、店に来る理由を作るために他の商品を仕入れているとも見ることができる。(そんなことはない、というか総合的に考えて運営しているだろうけど。)

コンソールゲームはどうなんだろう? 僕の知っているのは古くて、Gamecubeとかぐらいで止まっているんだけど、ゲーム販売店がゲームを作っているという印象はない(調べてはいないので、本当はあるのかも。)。でも今はネットワークでゲームを買う時代だろうから、DeNAとかはやっているのか? Epic Gamesとか気になるけど、どうなんだろう。ゲームは、作ろうと思ってから出来上がるまでに時間もコストもかかるというのが、つまり量産できないという性質がこの傾向を抑えているのかも知れない。

話を戻して、今からコンテンツをやる人達は消費者との接点を押さえに行くだろうし、お菓子を作る人は店舗も込みでビジネスモデルを考えるだろう。最初は生産だけをやっていても、いずれそこを押さえに行くことはどうしても視野に入ってくる。(繰り返すが出版関係はここでは何も言わない。)

そこでD2Cという言葉を思い出す。Direct to consumer、つまり生産者が直接消費者と繋がってしまおうという動きだ。これは、プラットフォームを迂回して消費者との接点を直接持ってしまおうということになる。インターネットのおかげで現実的になったビジネスモデルだなと思える。D2Cは生産者にとって、プラットフォームを目指さないのであれば必然的に取らざるを得ない戦略に見える。

消費者にとってはどうだろう? 今のところ、動画もお菓子も、安くなって、消費者にとっていいことのように思える。でも、彼等が市場を押さえたら値上がりしてくるかも知れない。してこないかも知れない。偏りのある物ばかり提供されるかも知れない。それで別にいいかも知れない。

D2Cとは関係ありそうなトピックだなと思いつつ、この辺はあまり考えていないのでもうちょっと時間を掛けてみようと思う。